ここはリトミックの教室です。
レッスンも終わり帰る準備をしています。このリトミック教室は、小さな細いビルの3階にあります。エレベーターはありません。
ベビーカーは下に置くところがありませんので、3階までくるくるの階段を持ってあがらないといけません。
さすがに力持ちのお母さんでも、帰りはベビーカーと子どもを一緒に抱っこして降りることはできません。
「お母さんちょっと下までベビーカー降ろしてくるから、
そこで待っていてね」
お子さまに声をかけて、お母さんは教室の扉を閉めました。
バタンと扉が閉まったものですから、
子どもはお母さんが帰ってくるってわかっていても、
ちょっと怖くなりました。
その様子を見ていた、もうひとりのお母さんが、そのべそをかいていた子どもを、ぐいっと抱っこで持ち上げます。
「お母さん来るからね。ここから見ていようか」
窓の外を向いています。
あと3秒抱っこしてもらうのが遅かったら、
不安とさみしさでこの子は泣きだしていたでしょう。
その隣のお母さんは、また違う子どもを見ています。
ベビーカーを階段の下から持ってきたお母さんは、
抱っこしていてくれたお母さんに、
「ありがとうございました」
と言いました。
「いいえ。いいえ。」
と抱っこしていたお母さんは言いました。
リトミックの教室は、お母さんとお母さんとお母さんがいっぱいいます。
ひとりの子どもを、お母さんとお母さんとお母さんがいっしょに成長を楽しんでいます。
そういうのって、
いいな、と思うのです。
そんなリトミックの教室です。
川田 智子 (子どもの託児をお願いした時よりも、心があったかくなります。きっと。)
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